愛すべき者たち
第52話 「地震の後に」
昨晩大きな地震があった。
仕事から帰ったおっさんは1階のリビングでウトウト。おそらさんは2階で寝ていた。
突然の携帯への地震を知らせる通知音。それとほぼ同時にゴゴゴという地鳴りと共に地震が起こった。
大震災とその後何度かの大きい地震を経験していることで、地震には多少免疫がついてたこともあり(←実際は初動が遅れるのでかなり良くない)当初はすぐに収まるだろうと思っていたが、そうではなかった。
時間にして30秒から1分程か?とてつもなく長く感じる。
収まるどころか、むしろ揺れが激してくなってきている。
天井に取り付けてある照明器具が落ちてくるのではと思えたほど。
(ヤバいな!おそらさんの所に行かないと!)
と思い、揺れが落ち着いてきたので、慌てて2階へと駆け上がる。
途中、棚上から落ちた物が廊下に転がっていたが、そんなことはどうでもいい。
おそらさんは大丈夫か?
これしか頭にない。
2階の寝室のドアを開けるとおそらさんを発見。
毛は逆立ち、尻尾も大きく膨らんでいる。
「おそらさん!」
と呼んでみても、声も出せずにいた。
余程怖かったんだろう…
「ごめんな、遅くなって」
おそらさんを抱きかかえて、地震も収まってきたので、1階に降りることに。
1階に着いてから、暫くの間おそらさんのお腹を撫でていた。
まだ声を発しない。
「怖かったね。ごめんな、おそらさん」
ふと周りを見ると、鏡が倒れ、台所の食器などが床に落ちていた。
大震災の時と同じ大きな地震だった。
ようやく落ち着いてきたおそらさん。
幸いな事に、電気や水などのライフラインに影響は出ていない。
しかしながら、あの時(大震災)も普通の日常だったのが、一変したのを思い出した。
床に落ちた物を片付けながら、おっさんは決意した。
(明日の休日は、自分の愛しいもののために時間を使おう)
翌日の2月14日。
朝起きて、まずはおそらさんのトイレと部屋の掃除。
いつもより時間をかけて丁寧に行う。
次は、通勤やプライベートで頑張ってくれている車の洗車。
こちらも時間をかけて、中も外も念入りに洗車と掃除。
最後に、今回の大きな地震から守ってくれた我が家を掃除+余震に備えて動いたり落ちたりするものを固定、もしくはすべり止めシートを敷き対策。
昨晩の大きな地震の後で、何度か余震が続いているので、残りの時間はおそらさんと一緒に過ごした。
「大丈夫おそらさん!今度は一緒にいるから!」
愛する者たちに費やす1日。ちょっと大袈裟かもしれないけど、こんな1日も悪くないなと思うおっさんであった。
最後に、今回の地震で被害に合われた方が、一刻も早く回復及び通常の生活に戻れることを祈っています。
つづく