舐め猫
第60話 「舐め猫」
舐め猫。
と言っても80年代に一世を風靡した「なめ猫」ではない(古っ!)
以前、障子を舐める猫と言う記事を書いたが、最近のおそらさんは、
障子、襖、建具、おっさんの腕を良く舐める。
ここ最近は特におっさんの腕を良く舐めるようになった。
最初は信頼してくれているのかなと思い、嬉しかったのだが、よくよく考えてみると、
5月は仕事が多忙で帰宅時間も遅かった。加えてハードワークのせいか、夕食を食べてソファーに横になると、意識を失うように眠ってしまう日々が殆ど。
おそらさんとのコミュニケーションも大分少なくなっていた。
「おそらさん、ありがとう!でももういいぜ!」
と、サンド〇ィッチマンばりに言っても、一向に舐めるのを止めないばかりか、むしろひたすら舐め続けている。
もしかしたら、おそらさんの淋しい気持ちが、腕を舐めるという行為になっているのかもしれない…
そう思ったら、急にいたたまれない気持ちになってきた。
「ごめんな、おそらさん」
今の仕事に就いてから5月で半年にはなるが、まだまだ半人前。
技術を学んで独立したいという目標はあるものの、おそらさんとの時間を削ってまで働く事が本当に幸せなことなのか?と弱気になる時もある。
だけど、今やっている事は必ず次に繋がる。蒔いた種は必ず大きな意味を持つという想いで続けて来たので、簡単に諦める訳にはいかない。
おっさんの腕を夢中で舐めるおそらさんを見て、せめて帰って来てからは、疲れていようとも、おそらさんが満足いくまで一緒に遊んであげようと心に誓うおっさんであった。
つづく