おそらさんの避妊手術【前編】
第20話 『手術前夜』
いよいよ明日はおそらさんの避妊手術。
病院から言われていることは2点。
・夜9:00以降の食事は禁止
・当日は水も飲ませてはいけない
前日の禁止事項は、人間の健康診断の時と殆ど変わらない内容。
猫にとって非常に厳しい内容だけど、ここは心を鬼にしてでも、おそらさんの手術が無事成功して帰ってこれるようにしなければと誓うおっさん。
おそらさんの避妊手術を決断した経緯として、おっさんの今の環境では、仮におそらさんに子供が出来たとしても、養っていけるような状況ではないこと。また、発情期に入り真夜中に激しく鳴く事での周囲への迷惑を考えた結果からである。
しかしながら、おそらさんにとっては望まない手術。
ましてや一度も出産を出来ずに母親になることを取り上げてしまうことが、おそらさんから1つの幸せを奪ってしまっているのではないかという自責の念に駆られながらも、これからおそらさんと一緒に暮らしていくには、やはり手術をするしかない!という葛藤を抱えつつ、何とか仕事が終わり帰宅。
そして、ここから長い夜が始まる…
時刻はすでに夜の9時過ぎ。おそらさんへのご飯をストップ。
身支度を済ませ、1時間程おそらさんと一緒に遊んで2人共就寝…
の予定であったが、ここから発情期の鳴き(大音量)が始まる!
何度もおそらさんの名前を呼ぶものの、一向に収まる気配は無し。
時に切ないような声を上げて鳴くので、
(もしかしてお腹が減って訴えているのでは?)
と思いつつも、ご飯をあげれないジレンマと闘う。
「おそらさん、明日手術だからご飯はもうあげれないんだ」
と言っても、理解(?)している訳もなく、夜鳴きはますます激しさをましていく…
何もしてやれないことと、いたたまれない気持ちが交錯する。
(先生(動物病院の)、これは飼い主にとって地獄の苦しみだぜ…泣)
時刻は午前3時を過ぎた。
おそらさんの夜鳴きはまだ続いている。
おっさんの心の声では、
『何でご飯がないの?ご飯を頂戴!』
と言っているように聞こえる。
「おそらさん、御免な!本当にごめん!」
繰り返し、この言葉しか言えなかった。
そして夜が明ける…
つづく