おそらさんの避妊手術【後編】
第21話 『手術の日』
長い夜が明けて、いよいよ手術の日の朝を迎える。
1~2時間程寝たのだろうか?余り記憶にはないが、気付くと布団の上で壁をずっと見ているおそらさんが居た。
何かを感じているのか…
その姿に少し不安がよぎる。
(いよいよ今日手術か……)
病院へは午前中までに行かなければならない。
身支度を済ませ、車で病院へと向かう。
病院までは車で10分程度。おそらさんをゲージに入れ、助手席へ乗せて出発。
おそらさんは車での移動が大嫌いで、乗せると必ず大きな声で鳴いて暴れる。
暴れるおそらさんを何とかあやしながら病院へ到着。
時刻は午前11時。
受付で今日の予定と手術の説明を受け、おそらさんを預けることに。
おそらさんの避妊手術は午後に行い、夕方の5時~7時30分の間には引き取りに行ける日帰り手術。
(どうか、何事もなく手術が終わりますように…)
そう願いながら一旦帰宅。
いつもなら2階の部屋を開けると、
「う~ニャ」と鳴くおそらさんがいるのだが、
もう1人の主の居ない部屋は、1人でいる時の何倍も静かで寂しい。
ふっと目をやると、おそらさんが最上部で寝ているキャットタワーやおそらさんが遊んだ玩具が目に留まる。
その瞬間、ああ、この部屋はもうおっさんだけの部屋ではなく、おそらさんとおっさん2人の部屋になってたんだなと実感する。
不安と孤独感が波のように押し寄せ、涙が出そうになるも、おそらさんも頑張っているのだから、おっさんに今出来ることは、手術を終えたおそらさんを快適に迎えることが出来るよう部屋を掃除してきれいにすること。それしか出来なかった…
午後7時。
この日は遅番だったので、会社に無理を言って休憩時間をずらしてもらい、全速力で病院へ。
手術は無事成功!!
お腹に包帯を巻いたおそらさんは痛々しかったが、先生を威嚇しているおそらさんにはちょっと笑った(やるな!おそらさん)
手術代を払い、お礼を言って、これまた全速力で帰宅。
家に着いてゲージを開けると、矢のような速さで2階に上がるおそらさん。
いつもはドライタイプのキャットフードだけど、この日はウエットタイプのフードをお皿一杯にして置いてみる…
勢いよく食べるおそらさん。
ひたすらに食べるおそらさんを見ていると、ただそれだけなのに涙が出る程嬉しかった!!
「頑張ったね!おそらさん!
無事に帰ってきてくれてありがとう! おかえりなさい!」
つづく