冬の天敵
第48話 天敵
おっさんは冬が嫌いである。
「いや!知らねーし!」
とツッコまれそうだが、ここ数年、厳密に言えば、おそらさんと一緒に暮らし始めてから更に嫌いになった。
冬が嫌いな理由。それは寒いからではない。
あいつらが猛威を振るってくるからである。
そのあいつらとは…
「乾燥」係長
「静電気」課長
「肌(手)荒れ」部長 ←何故か役職(笑)
まずは「乾燥」係長。
40を超えた辺りから、肌の乾燥にも拍車がかかり、冬になると指先は、
カッサカッサ!
たまにスーパーなどで買い物をして、レジ袋を開けようとするも、なかなか開かない。いやめくれないといった方が正しい。でも当時はそれほどストレスには感じていなかった。
しかし、おそらさんと一緒に暮らしてからは状況は一変。おそらさんのトイレを毎日片づけているのだが、その時必ずビニールのポリ袋を使う。これがレジ袋を超える難易度のため、水分が無くなった指先には大分荷が重い。
「イラっ!」(小レベル)
お次は「静電気」課長。
乾燥と相まって、静電気もこの時期の風物詩。
これも1人で生活するだけなら
「痛っ!」
で終われるのだが、おそらさんと生活しているとそうはいかない。
おそらさんを抱っこして、降ろしたりする時に、
『バチっ!』
となることがしばしば。
指先でさえあんなに痛いのに、おそらさんの体にかかる負担は如何ほどか?
おのれ!「静電気」課長!
「イライラっ!」(中レベル)
最後は「肌荒れ」部長。
仕事柄、薬品と水を常時使用するため、乾燥肌+あかぎれにより肌(手)はボロボロの状態。熱を持ってくると激痛が走ることもある。
普通ならハンドクリームや薬を塗れば良いのではあるが、毎晩布団の中に入って来てくれるおそらさんに、クリームや薬の付いた手で触りたくなかった。
(おそらさんに害を与えるなら、治らなくても本望!)
という覚悟の元に、指先の痛みと闘う日々。
そのため、
「イライラっ!イタっ!」(大レベル)
いずれもおっさん一人の生活ではそれほど気にしていなかったが、おそらさんとの生活が中心の今ではそうはいかなくなった。
そんな訳で、おっさんは冬が嫌いである。
だけど、寒いからこそ、おそらさんが毎日布団に入って来てくれることだけは、唯一の救いだなと感じるおっさんであった。
つづく